Everything in its right place
情けないお話ですが、
私は両親が喧嘩をした次の日の朝、いつも学校に行くのが億劫になります。
夜中まで2人の言い合う声がして、私はイヤホンをつけ、Radioheadを聞きながらベッドに潜り、声が止むのを待つ。2人は私のいる場所では決して喧嘩しない。私のことを、ほんの幼い娘だと思ってるのかもしれない。
しばらくして静かになったら、イヤホンを外し、私も眠る。
その次の日は、いつも朝ボーッとして「今日は学校行かなくてもいっか」となんとなく思う。
で、なんとなく午前中サボったりする。
親には全く知られていないので問題ない、単位を落とさない程度に遅刻を繰り返す。
それ以外で授業をサボることはほぼ無い。私は割と真面目な学生なのだ。
ただ、数ヶ月に1回の 2人の喧嘩が絶えない時期はいつもそうなる。
家にいるより学校にいたほうが絶対に気が楽なはずなのに。
これが、今年20歳になる女の話なんだから恐ろしい。
お前、もうすぐ成人するんやぞ…と自分に言い聞かせはするが、両親が喧嘩する度、私は子供みたいに妄想してしまう。
母と一緒に、祖父の家に逃げてしまおうと。私が連れ出してあげれたら、どんなにいいだろうかと。
そんなこと出来るはずがないし、本気じゃないけど、そういう妄想をして心が躍る自分も、確かに存在するのだ。
両親がどうせまた今夜も喧嘩するのだろうと思って、そう思うと帰りたくなくなって、意味もなく遅く帰った日があった。
夕飯を食べる私の隣に父がいて、向かいに母がいた。居心地が悪いからさっさと食べてしまいたかった。
その場で急に、
「知ってるだろうけど、お母さんとは最近よく喧嘩してる。でも嫌い合ってるわけじゃない。
お父さんはこんな性格だから、お母さんには迷惑かけてる。だから、あんたがお母さんを支えてやって」
と、父が小さな子供に話しかけるように優しく私に言った。私に凄く気をつかっているのがわかった。
涙が溢れてきて何にも言えなかったので、ただ頷いた。誤魔化すようにご飯をかきこみながら。どうしてこんなに泣けるのか自分でも全然わからなかった。
身勝手な父の言葉に腹が立ったのか。
初めて真正面から私にそんな話をしてきたことに感動したのか。
どこかで、がっかりしたのか。
たぶん本心では、もう離婚することにしたんだ、と言って欲しかったのだ、私は。
父が泣いていた。母もこっそり泣いていた。
親が泣く姿を見て、なんか、世界がものすごく不安定になった気がした。たぶん、信じてたものが本当は凄く頼りなくて、グラグラ揺れていることにやっと気づいたんだと思う。
私は、無駄に歳だけとって、大人になんてなれてなかったわけだ。
そしてたぶん私の両親も、私が思っていたほどには強くもなかったし、大人じゃなかったのだ。